童話『おひとりさまの神さま』

むかしむかし、あるところに、一人の男がいました。

ある日、男はふと思いました。

「神が外にいるから面倒くさいんだよな……よし、自分でやろう」

こうして、世界史上もっとも効率的で、最もメンタルに優しい宗教が爆誕しました。

『俺教(おれきょう)』

信者数:1名

神の数:1名

ただし両者は同一人物。

この宗教の素晴らしさは決定速度です。

神「今日は寝坊して仕事休むぞ」

信者「はい」

教義は3つだけです。

第一条 お前は正しい

第二条 第一条は常に正しい

第三条 違和感が出たら第一条に戻れ

祈りも爆速です。

信者「神よ、私はどう生きるべきでしょうか?」

神「好きにしろ」

信者「はい」

布教活動は一切ありません。

信者が増えると破綻するからです。

ある日、友人が言いました。

「それってただの自己満足じゃね?」

男は即答しました。

「違う。これは体系だ。」

友人は眉をひそめました。

男は続けます。

「社会では、他人の評価を神にしてる。

恋愛では、相手の感情を神にしてる。

承認欲求では、他人の視線を神にしてる。

責任では、因果を神にしてる。

ぜんぶ、自分の外側に判断を丸投げしてる。

俺はそれを回収しただけだ。

神を自分の内側にもどしたのさ」

さらに男は付け加えました。

「これを自己満足と呼ぶなら、

人間のほとんどの行動は、タコ(他己)満足だな。」

この宗教の欠点は、だれにも理解されないことでした。

しかし男は気にしません。

神(=自分)だけは理解してくださっているのですから。

いったい他に何が必要なのでしょう?

男は終生、信者&神として、

他人に価値判断を投げることなく、

効率的で平和な人生を暮らしましたとさ。

めでたし、めでたし。

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