書籍『プロセスエコノミー(尾原和啓著)』レビュー プロセスエコノミーとは、ざっくり言えば「“商品を作る過程(=プロセス)“自体を、お金儲けに使うこと」を指す。 これは従来の常識だった「完成した商品を売ることで初めて利益が出る」ビジネスとは一線を画す。 プロセスエコノミーの例としては、たとえば「マンガを描きながら、描いている姿を配信する」、「野菜を作る姿を消費者に見せることで、消費者の心をつかむ」などが挙げられる。 世の賢い人たちは、すでにプロセスエコノミーを実行しており、中には巨利を得る者も出てきたため、プロセスエコノミーの社会的な注目度が上がっている。その点で、本書の出版は時宜を得ている。 本書は、プロセスエコノミーを多方面から分析しており、「なぜプロセスに価値が出るのか」、「プロセスに共感する仕組み」、「プロセスエコノミーを実行する方法や実例」などが本書の切り口となっている。 私が感心したのは、プロセスエコノミーを礼賛するだけでなく、その弊害にも考察がおよんでいることだ。たとえば「内容が伴わないのに大言壮語する人にお金が集まる」「ファンの意見に左右されやすいため、自分の軸がブレやすい」などだ。 プロセスエコノミーでは「情熱」ばかりでなく「弱みを見せること」や「共感」なども重要になってくる。この点で、これまで「冷たくてビジネスライク気味だった」経済が、より「人間的に」なっていくだろう。 現代では、誰もがプロセスエコノミーという新しい経済に巻き込まれていくことは避けられなさそうだ。それならプロセスエコノミーに関する知識を仕入れておいて損はないだろう。 一般的に「新しい社会現象」に学問が追いつくには時間がかかる。そのため、プロセスエコノミーの教科書は(私の知る限り)ない。本書は当面のあいだ、プロセスエコノミーの「教科書」として、多くの人々に参照されることになりそうだ。 このブログのYoutube版はこちら